10cc 『びっくり電話』

10cc 『びっくり電話』 1976年リリース。
サスペンスタッチの凝りまくったジャケットはヒプノシス。
誰が決めたか、10ccといえば「アイム・ノット・イン・ラヴ」である。
では一番好きな曲は?、と聞かれれば多くの人はイカしたタイトル「人生は野菜スープ」と答えそう。どちらも75年の『オリジナル・サウンドトラック』に入ってる名曲中の迷曲。
ならばおぬしの一番好きなアルバムは?、と問われると少しばかり迷う。
オリジナルメンバー時代(73年~76年)の4枚はどれも甲乙つけがたい傑作。う~ん、そうだなあ…『シート・ミュージック』かなあ、なんて一番シブそうなのを選んでみたり…。
『びっくり電話』はオリジナルメンバー時代のラストアルバムで、緻密な手工芸品でも観賞してるような高精度なサウンド。実際ほとんど手作りのようで、ヘッドフォンでボリュームを上げると手の込んだ作業が立体的に見えるように聴こえる。
原題は『How Dare You!』。しかしこの『びっくり電話』という邦題もすこぶるいい。深く考えないで適当にやってみたところ上手くいきましたっていう例を挙げるならフロイドの『原子心母』といい勝負。

クリーム、ゴドレイ、スチュワート、グールドマン。
アルバム制作時はみんな30歳くらい。
町工場の手の感触だけで上手に研磨してしまう腕のいい職人集団。
この時代の10ccはとびきり美味しい食後のデザートみたいにそこにいた。
特にロル・クリームがリードボーカルをとる曲はデザート感覚っぽくて好みでした。と言ってもほかの3人も素晴らしくて、ビートルズならジョージ・ハリスンってな感じに、10ccならクリームかなあと、ぼんやり思ってました。でも誰が欠けても10ccにならないのが10ccですね。
ラストはゴドレイ&クリームの美しくも狂おしい名曲「電話を切らないで」でプッツンと終わって、オリジナル10ccはこれにてお開き。
ほかにも「アイム・マンディ」、「芸術こそ我が命」など太鼓判が押された曲が満載。この頃グループ内はもう二手に分裂してたんだろうけど、その微妙なバランスもいい。
今聴いても見事にこなれたアルバムを連発していた時代の10cc。
40年前の今頃、彼らはこんな音をせっせと作っていたのでした。